記憶を辿りながら
2020/11/07
++++
3時35分、朝刊をまだ祖母が取りに来ていませんでした。
安心し、そっと眠っている祖母の枕元へ、今日は成功です。
もう一度床に就き、寝入るよう努めます。目を閉じて心音を。
5時35分起床、45分から15分間空明りを。
空は全体的に雲が覆っていましたが、明かりとともに、雲の色も濃く暗い色から仄白くなってきます。静寂ですが、無音ではありません。不思議な感覚です。
7時の珈琲時間、
「今回は少し眠れたのではないかなぁ」と満ちた心地で珈琲を淹れます。
今日の予定を聞き、私に出来ることを確認しました。
++++
今日は、母の記憶を辿りながら想い出の味を作ります。
昔日、京都に赴いた際に飲んだ≪白糀の甘酒≫は≪生姜≫の味わいがしたそうです。
そこで昨日採った≪新生姜≫の風味を生かしたいと考えました。
二合のお米に180ccのお水を3カップ、≪おかゆ≫を炊きます。粗熱をとったら、白糀400gを混ぜ合わせ、≪保温器≫にかけます。我が家にある≪保温器≫は温度調節が出来ないので、プラグを抜き差しすることで調節します。
まずは30分間温度を上げ、確認、混ぜ合わせてから20分毎プラグで調節しながら、温度を一定にします。発酵する温度は60度近くです。
≪保温器≫の中に置いておいた混ぜ合わせるための≪しゃもじ≫の取っ手部分で、大体の温度を手もとの感覚で確認します。発酵は6時間以上かかります。
時間はかかりますが「慣れれば簡単」と母は言い切ります。
なんとか、私も幾許か助力する事ができました。
≪新生姜≫は、すりおろして≪甘酒»に加えます。
記憶を辿りながら一口、不思議そうな顔で母は「こんなんだったかな?」と一言。
母には≪想い出の味≫の印象が強く、出来栄えには少し疑問が残ったみたいでしたが、私には新鮮な味に思えました。
≪新生姜≫を加える前と後のものを飲み比べると良く分かります。
独特の香が心地よく、辛みが垣間見え、甘気の強い≪甘酒≫に≪新生姜≫の風味が混じり、さっぱりとした口当たりの良い味でした。
≪想い出の味≫を再現するため記憶を辿りましたがなかなか難しい≪課題≫でした。
私はかなり満足したのですが、母は相変わらず不思議そうな顔で≪甘酒生姜風味≫を飲んでいました。