一粒、半分こ
2023/02/25
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2月の半ば頃のことです。姉がいつものように突然、現れました。「はい、これ、持ってきたよ」と何気なく袋を差し出します。皆それぞれのことをしていた手を止め、姉に集中します。
姉は「チョコー」と、丹念な模様の小さな紙袋を机の上に。毎年のことながら、姉の行事好きは変わりません。本当に心遣い痛み入ります。
「あー、もうそんな時期か、忘れとった」「毎年ありがとね」「今年はどこのチョコ、」「それで来たんかー」と様々な反応を。
「みんな興味ないから忘れてたでしょ、」と姉から心にくる一言が。「忘れてた」と各自が頷く中、「私が食べたかったから、買ってきた」といつもの調子で。
毎年のように、私たちでは選択できないような≪一点豪華主義のチョコレート≫を、姉はこの時期になると振舞ってくれます。
≪お茶会≫の始まりです。「緑茶で良い、」母が適当に選びます。「うん、いいよ」こちらも適当に頷きながら、姉は早速チョコを一粒一粒、説明し始めます。
「これが、ダークとミルクのガナッシュで、こっちがヒマワリの種入っているプラリネ、これは、ブラックペッパーが入ってるよ」ざっと言いました。
「もう一回説明して」「全然わからん」「何かすごいね、今年も」と一粒ずつ味が異なるので、説明もいろいろと複雑です。
綺麗な装飾の小さな箱を開けると数は少ないですがチョコが丁寧に並んでいます。
どの味も気になる姉は「今年も、少しずつ食べる、」と皆に了解を得ます。ということで、一粒を半分ずつに割り、様々な味を堪能することに。
「すごい濃厚やね、」「あ、胡椒の味した」「これ一番香ばしいわ」「緑茶と合うねー」それぞれ味を見ながら、口々に発します。一粒でも小さいのにそれをまた半分にしたチョコは、あっという間に味わい尽くされてしまいました。
父が一言、「毎年こんなに高価なの購入しなくても」と。「私も気になってたから食べたかったし、来年は分からんよ、」と姉がはっきりと。
「いつも、ありがと、ごちそうさまでした」と、全員姉に感謝します。「おいしかったでしょー」と姉は満足げに、顔をほころばせます。
また皆で心地よい時間を過ごすことができました。
いつも気を遣ってくれてありがとうね、お姉ちゃん。