雪の下、春の香 八滴
2023/04/17
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陽の暖かさの間、しっとりとした雨が降り気温も落ち着いた日日が重なることによって、ささやかな生りは目まぐるしい巡りで生命を漲らせます。
雨の後の山、少しの光の合間を縫って母は≪たけのこ掘り≫に赴きました。今年は≪裏年≫となり、まったくと言っていいほど≪たけのこ≫を探すことが至難な不成り年です。
それでも、大切な人たちのためにお福分けにと、母はゆっくりと時をかけて探し、掘り出してきてくれました。≪押し切り≫という藁などを切断する道具で≪たけのこ≫の根を切ると、ふわりと山の土の香が漂います。「今年は裏やし、格好悪いけど仕方ない」と母が。
「前に≪たけのこ≫の大きいの見つけた時≪親竹≫にと思って残しといたのを猪に掘り起こされてしまったわ、猪もなかなか良い≪たけのこ≫に出合えんのやろ」と母は苦笑し、袋を差し出します。≪たけのこ≫を探すだけではなく≪ワラビ≫も採ってきてくれました。
これだけの山の幸を探し運んでくれた母に感謝です。大切な人たちに形の良さそうな≪たけのこ≫と≪ワラビ≫も一緒に添えて贈り届けます。
毎年、表年も裏年も贈り物として≪たけのこ≫を届けた後、残った少し格好のあまり良くない伸びてしまった≪たけのこ≫を我が家で食します。それでも、えぐ味も少なく歯触りもやわらかい≪たけのこ≫をいただけます。
山の土が時季を積み重ね、刻々と緑は濃くなる準備を始め、緑した世界は満ちた調和を魅せてくれます。しなやかに豊かな恵みを与えてくれる山と寄り添って歩む暮らしは続きます。
山の恩恵をありのままをいただけることは、幸せで、意義深く。
日日のあつまりで出来た≪自然の恵み≫と母に感謝します。