夢む、風光花 十一葉
2024/05/26
屋根の下から眺める空想風景。
新緑の若芽から日ごとに大らかに色を濃くしていく葉を、少し強めの風が揺らして音を鳴らします。しっかりと枝に生った葉柄は、ふわりと風を舞い込みまたゆらりと元に戻ります。新芽から少しずつ力を蓄え大成した葉脈は淡然たる時の流れを魅せてくれます。
今日は起床後、日課の【家の事】をし始めた時から【ぼんやり度】がいつもよりはっきりと表れ、昨晩から熱があったことを、すっきりとしない視界が示してくれます。
屋根の下から眺められる範囲は小さいですが、葉音、鳥や蛙の鳴き声、陽の暖かさ、輝く草花、遠くに揺らめく山々が感じられます。まだ色彩や音の気配を受け取れる余裕はあるようです。
暫くして皆が語り寄り添う様子を眺め、椅子の上で声を聞き流す不明瞭な頭の働きと、依然として長引く身体のだるさでは、心の気だけでは今日を乗り越えるのは無理なようでした。観念し、横たわり時を過ごすことになります。
日中は父は薪の切断作業を、母はとなりの畑へ赴き、祖母は花を綺麗に咲かせる為に草根との格闘を続けています。「相変わらず私は」と呟こうとしますが【陰】の言は自身が弱っている時に、なるべく聞かせてはいけないと留めます。
現在の状態では何を言われても好ましい方には取らない自身がいることに辟易します。
暫くは眠るという孤独な作業が続きます。大成した葉脈のように、力を蓄え巡りを好ましい方へ向け、どのような難があろうと悠然と立ち向かえるますように、と頭の中で唱え、掌を眺めました。
【陰陽】の情が時と共に流れ、巡り混ざり合うのをじっと待ちます。