薔薇が美しく咲く頃
2024/05/10
葉が柔らかく緑し伸びやかな枝を揺らめかす柿の木の傍で、花を丹念に手入れしている母に「決めたの、」と屋根の下から声を掛けます。「何を、」と手を止めずに聞き返されます。「贈り物」とぽつり呟くと、「あぁ」と思い出したように母が顔を上げました。
忙しく毎日を送っている姉が最も気にしている事でした。4月の結びの頃、休日に会いに来てくれた姉は「お母さん、今年は何欲しいんだろ、」と何故か私に聞くので、それとなく母にその旨を伝えると、何やら二人して【携帯端末】で連絡を取り合っていたようでした。
本人に直接聞けば、とも思いましたが、私の方が母と過ごせる時が有り難い事に長いので「必要なものも分かるのでは」と姉は思っているみたいです。その辺りは当たらずと雖も遠からずで、何となくですが「現在欲しいものはこれかな、」と予想はしていました。
なので答え合わせを、と母に聞いてみたのですが、「まだいいよ、って言っといた」との返答。5月に入ってますます忙しくなってきた姉への配慮で「休める日には休んで欲しい」とのこと。一緒に買い物へ出掛けるのも躊躇われるのでしょう。毎年のことですが。
母のいつもの返答に「じゃぁ、私は、」と煩わしいだろうな、と思いながらも聞いてみました。私は母に見合ったものを簡単に購入できる立場ではないので、母は私にはそのような事を要求しません。
が、他に何か出来る事はないかと思案し、思い切って尋ねてみたのですが「瀞愁は、毎日家の事してくれてるからいいよ」との切り返し。毎年のことですが。
「じゃぁ、半永久肩叩き券また更新やね、」と間延びした声で花の手入れを怠らない母に向けて返しました。「そやねー」とこちらも聞いているのか聞いていないのか分からないような返事。
相も変わらず、母には敵いません。