鍵盤と目比べ
2023/05/07
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歩廊を兼ねた3畳ほどの空間に一人ずつの机を。肩を並べ、会話時々喧嘩、そして冗談を言い合いながら作業をし、いつも共に過ごしています。
少し前、家族で共同購入した≪電子鍵盤≫を。隣では祖母が毎日のように「故郷」を練習しています。
祖母は楽譜が読めません。昔習ったのはドレミファソラシドではなく≪いろはにほへと≫だったそうです。それでも独学で、「故郷」を弾けるようになったと言います。そして、≪電子鍵盤≫が来たことで、祖母の闘志に火が付きました。
≪電子鍵盤≫はまるで≪教科書≫のようで弾くところが光るだけではなく≪右手≫≪左手≫≪両手≫と練習でき、正しく鳴らすために≪指番号≫を≪音声≫で教えてくれます。一小節ごとの練習もでき、至れり尽くせりです。
祖母は正しい≪指番号≫で完璧に弾けるようになるために、一小節ずつ練習し始めました。流れるような音を響かせられるようになるまで、何度でも。
練習なので間違えても良いところですが、少し間違えると「だめだった」と落ち込み、「練習なのだから間違えても良いんだよ、」と言っても、頑張り屋で頑固な祖母は、間違えたところを何度も悔やんでは、もう一度弾き始めます。
高齢な祖母は、手を長時間使用すると、掌が張って痛みが増すので、「今日はここまでだよ」と伝えなければ、一日中弾いていそうな勢いです。
指が覚えるまで何度でも、努力家の祖母らしいです。
「故郷」を流れるように弾けた時、祖母はきっと笑顔を見せてくれるでしょう。