万有引力
2024/06/08
「よいしょ、よいしょ」と陽風に当て、乾かした衣服を運んでいる祖母と会いました。今日は【衣替え】と【衣服の片付け】をするようです。暫くすると、「瀞愁、台持ってきて、あれ取って」と呼ばれます。返事を軽くし、予想通り展開になった事に、ほっと胸を撫で下ろします。
出来る限り自身の力で何とかしようとする祖母は、【衣服収納場】の高い位置にある箱を力を尽くして取ろうとする時があります。普段から身体の芯がふらつく事もあるので台に乗って、となると気が気ではありません。
前々から「上段にあるもの欲しかったら必ず私に一言お願いね、」と申し出ているのですが、稀にそのままやり通すこともあるのです。補助を強要するのも好ましくないのかもしれませんが、心の気が休まらないのでどうしても口を挿んでしまいます。
「どれ、」「その上のと、下の箱」「これかぁ、ちょっと待って」「ありがと」と時が過ぎ去って幾十年も経た箱を上段から取り出し、手渡します。中に含まれているものを確認し、入れ替え、時には「これ、何やったやろ、」と不思議そうに箱を開けます。
「入れてもすぐ忘れる」と呟きながら、衣服の確認と吟味しながら「もうこれ着んかな、」と手放す候補を見出します。祖母は物持ちが良く、大事に着こなしているのでそう簡単には手放さないのですが、本人は「減らさんなん」と心を構えているようでした。
私も部屋を斉え風通りの良い空間つくりをしなければ、と祖母の姿に余情を覚え取り掛かります。努め励んでいる姿をみると、こちらも何か取り組まなければと引き寄せられます。
本格的な暑さの前の爽やかで穏やかな日に、
心を晴らすように空間をふわりと流し、心地よく解放させます。