言の葉と風味、木葉採月
2024/04/15
祖母のこの時季の愉しみと言えば、遊歩がてら【蕗の薹】【三つ葉】【蓬】【野蕗】などの山野草摘みです。今年は積雪量が少なく2月は暖かい日がありましたが、3月は寒に逆戻りしたような日日が続きました。
野の目覚めも遅く、祖母も「まだ蕗の薹も出ていない」と話していましたが、桜の蕾が膨らむと野に咲く野草も生りに久しく、と次々に山野に芽吹きました。
【蕗の薹】は揚げ物【三つ葉】は浸し物に。【蓬】はまだですが、昨日【野蕗】を600g程採ってきてくれました。葉や筋を取り、切った【野蕗】を【にごし(お米の研ぎ汁)】に漬けておきます。塩で揉んで灰汁出しをすれば準備が整います。
【伽羅蕗】を作ってくれました。【伽羅蕗】とは【野蕗】などを甘辛く煮詰めた【佃煮】で、【砂糖】【醤油】【酒】【みりん】調味料の分量は祖母の【料理日誌】に綴ってあります。最近では作ったことがある品でも作る度、記しています。
少し記憶が曖昧になる頃、今したことや言ったことが遠くに行きがちです。傍に居て記憶を補う作業を少し手伝いました。
「今、どんだけ入れるって言ったっけ」「50cc入れるって言ってたよ」「おぼえといて、瀞愁」このやり取りが続き、祖母自身【料理日誌】に記しながら、「この日を忘れないため」努めます。
最後に辛みとなる【唐辛子】を入れると「味見てみ」と【伽羅】の色をした【伽羅蕗】の完成をみせてくれます。いつもちょうど良い【野蕗】のほろ苦さがする風合いに仕上がります。
家族の「おいしい」の言が祖母の気を晴れやかにしてくれるでしょう。
いつもありがとう、おばあちゃん。