そよぐ鴨の羽色
2024/05/15
好天と荒天が重なり行き交う合間の日、まっさらで爽やかな陽気の中、春の風にのって気合いの入った躍動音がします。平生は車の走音も疎らな地に弾みのある音は響きます。時季がやって来ました。
田を耕し水が張られ、大事な事前準備の【代掻き】が行われた日から数日、苗を植える準備が整い、地域の田の全域を担っている農家の方が順を追って【田植え】作業を始め、今日は我が家の付近の田の植え付けです。
5月に入りそろそろかなと傍の田を気にしますが、田慣らしが行われてもなかなかに始まらず、繁忙期と気候にも因るのでしょうか、日は定まっていないような気がします。
小さな頃は各家庭が私有の田を管理し、躍動音も幾田から聞こえ賑やかでした。温室で育苗し連休に親族総出で【田植え】や作業を行い、時季が来ると【脱穀】のため農業協同組合の脱穀場には道に長蛇の軽自動車が列を成していた事を覚えています。
その頃の私と姉にとっての大仕事は【育苗箱】洗いでした。我が家の前の小川で上流と下流に分かれ、上流では【育苗箱】を土を落とし、そのまま箱を流して下流で受け取り、洗ったあと箱を積み上げていく作業を繰り返していました。どちらが上流になるか争ったものです。
5月の大型連休の恒例行事で、その頃は大変な仕事を任されたとややこしい心持ちになったものですが、それも小さな頃の清々しい空模様の記憶の欠片となりました。
現在では近くの農家の方に頼っています。すくすくと育った青い稲が夏を越え、黄金色の穂になるのを天に祈り、地に願い、人に感謝し、育つのを見守ります。
日暮れになり、伸びやかな蛙の声高な音色が悠々とした青い田に響き渡りました。