雪の下、春の香 六滴
2023/04/10
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歩廊を兼ねた3畳ほどの空間に一人ずつの机を。肩を並べ、会話時々喧嘩、そして冗談を言い合いながら作業をし、いつも共に過ごしています。
雨模様が通り過ぎた陽の光の濃い日和、桜が萌黄色になり始めました。朝は落ち着いた温度も、昼になると温度差15度近く異なります。活動しやすくなるため皆外へ赴きました。私は名もなき家事をしながら家でそっと過ごします。
≪蕗の薹≫≪椎茸≫≪三つ葉≫に続き、祖母は山の恵みを我が家に届けてくれました。≪野蕗≫です。
祖母は高齢なので山には登らないで欲しいと家族の切なる願いを聞き入れてくれますが、それでも自身で出来ることは出来るだけと、これまで通りたくさんの春を届けてくれます。祖母が≪野蕗≫を手早く下処理している間に、次は母が時間を掛けて山の幸を運んできてくれました。
山のように≪ゼンマイ≫を緑した山から採り選って来てくれました。山菜は山の土が湿った独特の香がします。祖母と母が≪ゼンマイ≫の綿帽子を取り、選り分けていきます。その手際の良さに相変わらず感嘆しました。
「大きい蛇がおったよ」「うわ、危なかったね」「逃げんと、じっとこちらを見てゆっくり動いて行ったわ」と祖母が、「山はまだ明るかったよ、木々はまだ若葉が生えたとこや」と母が、様子を教えてくれました。
本当は≪たけのこ≫の調子を見たかったそうですが、さすが≪裏年≫全くと言って生えていなかったそうです。「猪が≪たけのこ≫見つけれず≪わらび≫の根っこ掘ってあったわ」と。
山は息吹き始め生き物たちも人間と変わらず生々たる動作にはいります。これから緑した山が濃くなる季節になり、鬱然と生い茂っていく様になります。猪、カモシカ、熊などと。家族が山へ赴くとやはり気になり、祈らずにはいられません。
人と山裾まで下りてくる生き物たちが共存できますように。
山の恩恵をありのままをいただけることは、幸せで、意義深く。
日日のあつまりで出来た≪自然の恵み≫と母と祖母に大きな感謝を。