閑に恬と、

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+-極矮小世界観点-+

-安閑恬静-

【統合失調症】のち【双極性障害】【パニック障害】の青人草の一端が家族に支えられ生きています。

話し相手は家族だけの小さな世界から、ぽたりと【ひとりごと】を。

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夢む、風光花 十一葉

2024/05/26


屋根の下から眺める空想風景。


新緑の若芽から日ごとに大らかに色を濃くしていく葉を、少し強めの風が揺らして音を鳴らします。しっかりと枝に生った葉柄は、ふわりと風を舞い込みまたゆらりと元に戻ります。新芽から少しずつ力を蓄え大成した葉脈は淡然たる時の流れを魅せてくれます。


今日は起床後、日課の【家の事】をし始めた時から【ぼんやり度】がいつもよりはっきりと表れ、昨晩から熱があったことを、すっきりとしない視界が示してくれます。


屋根の下から眺められる範囲は小さいですが、葉音、鳥や蛙の鳴き声、陽の暖かさ、輝く草花、遠くに揺らめく山々が感じられます。まだ色彩や音の気配を受け取れる余裕はあるようです。


暫くして皆が語り寄り添う様子を眺め、椅子の上で声を聞き流す不明瞭な頭の働きと、依然として長引く身体のだるさでは、心の気だけでは今日を乗り越えるのは無理なようでした。観念し、横たわり時を過ごすことになります。


日中は父は薪の切断作業を、母はとなりの畑へ赴き、祖母は花を綺麗に咲かせる為に草根との格闘を続けています。「相変わらず私は」と呟こうとしますが【陰】の言は自身が弱っている時に、なるべく聞かせてはいけないと留めます。


現在の状態では何を言われても好ましい方には取らない自身がいることに辟易します。


暫くは眠るという孤独な作業が続きます。大成した葉脈のように、力を蓄え巡りを好ましい方へ向け、どのような難があろうと悠然と立ち向かえるますように、と頭の中で唱え、掌を眺めました。


【陰陽】の情が時と共に流れ、巡り混ざり合うのをじっと待ちます。




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裏庭珈琲茶会 四草

2024/05/23


春初めから梅雨まで陽のある日は時々【裏庭珈琲茶会】と称し、家の裏庭で珈琲を愉しみます。朝、6時30分過ぎに開催され、出席したい人だけ集まります。私は毎朝珈琲を淹れる担当です。


四年前から始まった【珈琲茶会】は時間帯が変わったり、途切れたこともありましたが、まだ細々と続いています。屋根の下で珈琲を淹れたあと、陽の明るい日は珈琲を手に裏庭に赴きます。


春は桜見に、緑成す5月には陽当たりの柿の葉の、若芽から鷹揚と成る葉の色合いや様子を眺めます。草花は咲き競うように花弁を広げ、6月の輝きの季節にはますます鮮やかに色を濃くしていくことでしょう。


生りに成り陽と調和していく草木花の様子は日に日に見事なものです。


自身の加減で窓から眺める日も多いですが、裏庭に歩を進められると色の風合い、土の香を直に吸い込み、生かされていることを肌で感じ得ます。


汗ばむ日中も陽の浅い時間帯なら遊歩には合いの道となります。変わり声の野鳥を探し当てるのもこの時で、馴染みのあまりない鳴き声を愉しみます。


陽光射す裏庭は生ける草花鳥虫の憩う場でもあり生活圏なので、程よく早朝に歩くと小さな生き物の営みを垣間見、日に活ける力を養い気づかせてくれるのです。




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深緋のしるし

2024/05/18


日が経つごとに季節が重なり交じり合う瞬間が濃くなってきました。それでも朝晩と日中の気温の振合いの高低差はどうすることも出来ません。【となりの畑】の大事な【こどもたち】が耐え忍ぶ様子を母は心苦しそうに見守ります。


無農薬・有機栽培で成り立つ【となりの畑】は益虫はもちろんのこと害虫も有りきなのですが、それより何より【狩師】の存在が【こどもたち】と母を脅かしています。


【狩師】は小型で縦横無尽に畑を飛び回れます。特に【こどもたち】と言うよりその根付いた土の中の【小さな生き物】を狙っているようです。有機栽培の特徴はその【小さな生き物】たちが豊かに住める状況を作り上げているのです。


それでも掘り返されては大変、と母も対策は兼ねているのですが、それこそ【いたちごっこ】で毎朝【となりの畑】を「こどもたちを、見てくる」と確認しに行っては夜行性の【狩師】の爪痕を見つけるのでした。


「どうすれば良いのだろう、」とその日の【珈琲時間】は【となりの畑対策本部】となっています。以前は祖母が管理していた畑ですが、その頃はそれ程【狩師】は活躍していなかったそうです。


母が受け継いだ後、徐々に近隣の畑にも囲いがされ、罠を仕掛けと強固な面持ちで皆挑んでいますが、【狩師】はあちらこちら狙いを定めては突撃してくるのでした。


それでも見守っている【こどもたち】の中の一種類【苺】が5月の初旬から採れ始め、美質は異なりますが、揃いも揃って艶々した満面の色です。


「今朝採ってきたから、どうぞ」とどこか誇らしげな母が、輝く摘みたての【苺】を皿にのせ、ことんと机に置きます。「おぉ」と家族から感嘆の声が、そして有り難く一粒いただく事に。酸味が強めですが【苺】独特の風合いがふわりと香ります。


この一粒一粒は【となりの畑】と母が根気強く育て、守り抜いたしるしです。




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そよぐ鴨の羽色

2024/05/15


好天と荒天が重なり行き交う合間の日、まっさらで爽やかな陽気の中、春の風にのって気合いの入った躍動音がします。平生は車の走音も疎らな地に弾みのある音は響きます。時季がやって来ました。


田を耕し水が張られ、大事な事前準備の【代掻き】が行われた日から数日、苗を植える準備が整い、地域の田の全域を担っている農家の方が順を追って【田植え】作業を始め、今日は我が家の付近の田の植え付けです。


5月に入りそろそろかなと傍の田を気にしますが、田慣らしが行われてもなかなかに始まらず、繁忙期と気候にも因るのでしょうか、日は定まっていないような気がします。


小さな頃は各家庭が私有の田を管理し、躍動音も幾田から聞こえ賑やかでした。温室で育苗し連休に親族総出で【田植え】や作業を行い、時季が来ると【脱穀】のため農業協同組合の脱穀場には道に長蛇の軽自動車が列を成していた事を覚えています。


その頃の私と姉にとっての大仕事は【育苗箱】洗いでした。我が家の前の小川で上流と下流に分かれ、上流では【育苗箱】を土を落とし、そのまま箱を流して下流で受け取り、洗ったあと箱を積み上げていく作業を繰り返していました。どちらが上流になるか争ったものです。


5月の大型連休の恒例行事で、その頃は大変な仕事を任されたとややこしい心持ちになったものですが、それも小さな頃の清々しい空模様の記憶の欠片となりました。


現在では近くの農家の方に頼っています。すくすくと育った青い稲が夏を越え、黄金色の穂になるのを天に祈り、地に願い、人に感謝し、育つのを見守ります。 


日暮れになり、伸びやかな蛙の声高な音色が悠々とした青い田に響き渡りました。




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時には昔の頃に

2024/05/13


「持ってきたよ」と玄関先でひとこと、そしてすたすたと。母に「どうぞ」と中へ招かれます。手には贈るための花の鉢、そして「花だけやったらあれやし、これもどうぞ」と菓子箱を一緒に祖母へ手渡します。


叔父さんが【母の日】に合わせて【贈り物】を持ってきてくれました。突然の来訪に祖母は一瞬きょとん、と心の波が止みましたが、すぐ破顔して「おぉ、よう来た」と母親の顔になります。


年数を経ても祖母にとっては子供は子供、私に向ける笑顔とはまた違った笑みを溢します。市外に住んでいる叔父さんは祖母の三番目の息子で、よく祖母は「山の幸採れたから」「豆炊いたから」と招き、その都度叔父さんは気軽に我が家に来てくれる存在です。


暫しの間、父と祖母と叔父さんの親子の言葉のやり取りが続きます。祖母の声の明るさは、叔父さんに嬉しさを伝えます。最後に「また来てな」と手を振り、車が角を曲がると少し名残惜しそうに「行ったわ」と呟きます。


宅配便で【贈り物】が届きました。花と菓子箱です。今度は二番目の息子の東京の叔父さんです。これまた愛らしい花が籠に集まっています。「すごいね、色とりどりやね」と反応すると、花々の好みがぴたりと合った祖母は「2、3日は鑑賞し植え替えて下さい、やと」と花の【取扱説明書】を懸命に覗き込んでいました。


届いてすぐに、東京へ電話を掛けます。声を爛々とさせ「ありがとな、ありがとな」と繰り返し、感謝の言葉を渡します。叔父さんからは「祖母ちゃんも、元気でな」と言われても「ありがとう」感謝の言葉は途切れません。


恒例の【母の日】ですが、祖母にとっては毎年忘れ得ぬ日になっているのでしょう。叔父さんたちは【贈り物】で、祖母は元気な姿、嬉しい声でそれぞれ感謝の意を表します。


薔薇が美しく咲く頃は幾年経ても共に過ごした昔日の時を思い起こさせてくれるのです。




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